ハードウェアエンジニアリングの世界

電子機器の量産開発を通じて学んだことを書くブログ

筐体の材料 - 板金

電子機器で切っても切れない関係が基板と筐体です。

今回は筐体は何でできているのか話をします。

 

大きめの電子機器や、業務用の機器を見ると、金属の筐体が使われていることがあります。

この金属の筐体が・・・タイトルにあるように板金です。(もちろんそれ以外もあります!実際に板金が多いですという話です。)

 

身の回りではデスクトップPCの筐体(ケース)が板金になります。最近はあまりやる人を見かけませんが、自作PCで組み立てるときに、HDDを固定したりファンを固定したりする部品がそれです。

 

ではなぜ板金をよく使うのでしょうか?

 

板金が多い理由は幾つかあります。

・不要輻射対策

・経年劣化の優位性

・コスト

 

1つ目の不要輻射対策は何かというと、電磁波対策のことです。

電子機器からは電磁波が出ているのですが、体に害がないよう、電子機器はある一定の基準を満たさないと、世の中に売り出すことができないようになっています。

 

よく製品に貼られているラベルを見ると、FCC(北米)とかCE(ヨーロッパ)、VCCI(日本)というマークがありますよね。これらのマークが印字されているということは、ちゃんと基準を満たした製品ですと国の機関からお墨付きをもらっているということになります。

でもこの不要輻射対策・・・結構大変なんです。

板金は電気を流すため、グランドとして使うことができます。しかし、一方で電気的ノイズが板金に入ってくると、その板金部品自体がアンテナとなって電波が出てきてしまうということがあります。

僕自身、回路設計者と一緒に電波暗室に行き、部品の調整を行いながら開発を行い、なんとか合格を出すことができたという経験があります。

ほんのすこし電気の流れを変えるだけで電波が外に漏れなくなるんです。不思議な世界です。

 

次に経年劣化に強いということです。

金属と樹脂を比較して、どっちが経年劣化に強いかというと、やはり金属が強いです。

自分が設計していた製品も10年は使える製品でなければならないということで、板金部品一択でした。

余談ですが、筐体が樹脂というのはコンシューマ向けに多いです。コンシューマ向けはやはりメーカー側としては売れるようなデザインを製品で実現しなければならないため、より複雑な形状が作れる樹脂になるというわけです。

でも、樹脂は不要輻射対策には向いていないため、樹脂筐体の製品を開発しているエンジニアさんは本当にすごいと思います。

僕の同期も樹脂筐体で、不要輻射対策に悩まされていました。お疲れさまです。

 

そして最後にコストです。

板金部品はコストを抑えることができます。

どういうことかというと、金型を共通化することができるのです。

板金というのは鋳造とは違い、金属を溶かして型に流し込むわけではありません。

平たい金属を何十トンという力でプレスすることで、型に沿って曲げたり、穴を開けたりして形を作っていきます。

 

そのため複雑な形状になると、1回のプレスでは済まず、複数の工程が存在し、複数の金型が必要となります。

設計者は将来のことを見据え、一部の金型を他の製品でも使えるように、金型の打ち合わせの際に加工工程を工夫するよう金型屋さんに依頼するといったこともします。

このように金型の1部を複数の製品でシェアして、部品単価を下げるということも行っています。

 

ぜひ周りにある板金部品を見てみてください。そこには設計者の苦労が隠れていますよ!