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ハードウェアエンジニアリングの世界

電子機器の量産開発を通じて学んだことを書くブログ

カウントダウンタイマーの紹介

今日は自身が製作したカウントダウンタイマーを紹介します。

現在このカウントダウンタイマーは浜松市にあるエムオーティーさんにて活躍しています。塗装関連の機器を動かすときにタイマーで勝手に電源が切れるようにしたいとの要望をいただき製作させていただきました。

 

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かなりシンプルな製品ですが、こだわりポイントもあります。

こだわった点としては、

長期間使用しても不具合が起こらないロータリーエンコーダ

です。

これは意外と簡単なようで、しっかりとアルゴリズムを作りこまなければなりません。

ロータリーエンコーダや、タクトスイッチはチャタリングというノイズを発生させます。このチャタリングが結構厄介で、組み込みソフトの誤動作につながることが多々あります。しかも設計者が開発をする環境では、部品自体もほとんど使われてない状態から始めるので、チャタリングの不具合が現れないこともあります。

www.marutsu.co.jp

 

以前、チャタリングを取り除いて、正しく動作するロータリエンコーダアルゴリズムを考えろというのにチャレンジしたことがあります。僕はこれを解決するのに2週間ほど要した記憶がありますが、同期も同じタイミングでこの問題にチャレンジしており、彼はすんなりと終わらせていました。さっと終わらせていた理由はひどいチャタリングが顕在化していなかったから。ハードウェアでフィルタをかけて、取り除けたようです。

 

自分はというと、回路でフィルターを作ってもチャタリングが残ってしまい、ファームウェアでなんとかしなければならず、同期と比べて複雑なアルゴリズムを作って完了させました。

 

ただこの時の苦労をこのプロダクトで活かすことができました。

ポイントは

すべての状態遷移をチェックする!

ロータリーエンコーダのA相とB相の1つ前の状態と今の状態からなる4bitの変数を作り、この変数をswitch文で正転か反転か、それともノイズなのかをチェックをするというものです。4つの状態がそろったら1つ進むというふうにしました。

これによりチャタリングノイズに強い、エンコーダのカウントアルゴリズムを実現しました。

もしロータリエンコーダアルゴリズムで悩んでいらっしゃる方はこの方法を参考にしてみてください。ソースの公開は積極的に行っていないので、教えて欲しいという方はご連絡いただければと思います。

 

garage-mot.com

 

 

 

筐体の材料 - 板金

電子機器で切っても切れない関係が基板と筐体です。

今回は筐体は何でできているのか話をします。

 

大きめの電子機器や、業務用の機器を見ると、金属の筐体が使われていることがあります。

この金属の筐体が・・・タイトルにあるように板金です。(もちろんそれ以外もあります!実際に板金が多いですという話です。)

 

身の回りではデスクトップPCの筐体(ケース)が板金になります。最近はあまりやる人を見かけませんが、自作PCで組み立てるときに、HDDを固定したりファンを固定したりする部品がそれです。

 

ではなぜ板金をよく使うのでしょうか?

 

板金が多い理由は幾つかあります。

・不要輻射対策

・経年劣化の優位性

・コスト

 

1つ目の不要輻射対策は何かというと、電磁波対策のことです。

電子機器からは電磁波が出ているのですが、体に害がないよう、電子機器はある一定の基準を満たさないと、世の中に売り出すことができないようになっています。

 

よく製品に貼られているラベルを見ると、FCC(北米)とかCE(ヨーロッパ)、VCCI(日本)というマークがありますよね。これらのマークが印字されているということは、ちゃんと基準を満たした製品ですと国の機関からお墨付きをもらっているということになります。

でもこの不要輻射対策・・・結構大変なんです。

板金は電気を流すため、グランドとして使うことができます。しかし、一方で電気的ノイズが板金に入ってくると、その板金部品自体がアンテナとなって電波が出てきてしまうということがあります。

僕自身、回路設計者と一緒に電波暗室に行き、部品の調整を行いながら開発を行い、なんとか合格を出すことができたという経験があります。

ほんのすこし電気の流れを変えるだけで電波が外に漏れなくなるんです。不思議な世界です。

 

次に経年劣化に強いということです。

金属と樹脂を比較して、どっちが経年劣化に強いかというと、やはり金属が強いです。

自分が設計していた製品も10年は使える製品でなければならないということで、板金部品一択でした。

余談ですが、筐体が樹脂というのはコンシューマ向けに多いです。コンシューマ向けはやはりメーカー側としては売れるようなデザインを製品で実現しなければならないため、より複雑な形状が作れる樹脂になるというわけです。

でも、樹脂は不要輻射対策には向いていないため、樹脂筐体の製品を開発しているエンジニアさんは本当にすごいと思います。

僕の同期も樹脂筐体で、不要輻射対策に悩まされていました。お疲れさまです。

 

そして最後にコストです。

板金部品はコストを抑えることができます。

どういうことかというと、金型を共通化することができるのです。

板金というのは鋳造とは違い、金属を溶かして型に流し込むわけではありません。

平たい金属を何十トンという力でプレスすることで、型に沿って曲げたり、穴を開けたりして形を作っていきます。

 

そのため複雑な形状になると、1回のプレスでは済まず、複数の工程が存在し、複数の金型が必要となります。

設計者は将来のことを見据え、一部の金型を他の製品でも使えるように、金型の打ち合わせの際に加工工程を工夫するよう金型屋さんに依頼するといったこともします。

このように金型の1部を複数の製品でシェアして、部品単価を下げるということも行っています。

 

ぜひ周りにある板金部品を見てみてください。そこには設計者の苦労が隠れていますよ!

部品の位置決め

3DCADを使うようになると、PCの画面の中で美しく形ができていて、量産ではこのモデリングした通りに出来上がると思ってしまいますよね。

でも、実際にはそんなことはできません。

なぜなら3DCADは

・ばらつきを表現できない

・実際の加工では相当難しい形状(例えば直角で曲げる等)で表現している。

・重量が考えられていない。

からです。

 つまりこの部分を頭の中で考え、補正を入れながらモデリングしなければならないのです。逆に全くこの補正をせずにモデリングをすると、モデリングと実物の出来に大きな差ができてしまいます。

 

モデリングをする中でしっかり補正を入れなければ、出来上がりのばらつきも大きくなります。考えられているかどうかは図面にも現れるので、結果同じ開発時間でも、エンジニアによって品質の差が格段に開くということが起こります。

 

では、実際にその補正について説明します。

よくあるケースがAの部品にBの部品を固定するという場合です。

AとBのアセンブリのばらつきを減らす=AとBの部品の関係性を極力一致させるということです。

このばらつきを減らすポイントは

 X軸Y軸Z軸方向、正負の両方向で固定が出来ているか

に限ります。

全方向で固定と言っても、すべての方向でネジ締めをするというわけではありません。

極力一致させることが大事なので、ほとんど動かないような構造を作ることが大事です。(完璧に一致させるのは相当難しいと思います。量産にならないです。)

 

お気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、ばらつきを減らすためにはやはり部品自体もばらつきを減らす必要が出てきますね。(きになる方は図面の記事を読んでください。)

 

参考になればと1つ部品を描きました。

四角い基板です。

基板は筐体に固定する想定で四箇所ネジどめをします。

この時、基板のバラつきを極力へらし、固定するための1つの回答として1つ作りました。

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説明すると、

右下の穴が基準穴となり、X軸、Y軸方向の固定をします

しかし1点だけでは回転してしまうため、Y軸方向の固定をするために左下の穴のY軸方向の幅を狭くしました。これでX軸、Y軸が決まりました。

基板なので、Z軸方向はネジを四箇所締めることで、しっかりと固定されます。

こうすれば確かに3方向でバラつきを減らして固定できていますね!

 

ベテラン設計者はこのことを当たり前のようにやっています、設計レビューの時に

"前後はここと、ここで固定して、左右はここと、ここ。そして上下はここと、ここで固定しています"

のように語ることができます。かっこいいです。

モデリングが一通りできた時、自分でこの部品はどうやって固定されているのか説明できるかチェックしてみましょう。

これがすらすらと言えないということは、そこがばらつきが出そうなポイントだと考えるのが良いかと思います。

 

今回は基板の例を挙げましたが、固定方法も部品同士の形状だったり、ネジだったり、いろいろな方法があると思います。

バシッと位置を決めができている設計をやりましょう!

基板外形の設計 - 基板の位置決めを考えていますか?

今日は基板について話をします。

会社によると思いますが、機械設計者が製品の基板の形状を設計しています。

実際に、僕も基板の外形を設計していました。

もちろんただ設計するだけでなく、生産技術の面も踏まえて設計するということで、基板が複数あった場合は基板集成の設計も行います。

基板集成というのは複数の基板を1つの基板として作ってしまうものです。

個人で1つの基板を作る時はほとんど気にしませんが、量産となると、基板をフロー半田付けやリフロー半田付けといった方法で半田付けをするため、基板をジグに固定しても問題ないように捨て基板を設け、位置決め穴を作ったり、基板が反りにくいようにレイアウトするといったことを行います。

今回はこの集成基板の手前の、1つの基板に着目した話になります。

(集成基板についてはまたどこかのタイミングで。)

 

 基板の形状というと、回路を実現するために必要な面積を確保することが第一の目的と考えます。それは正しいです。これに関しては回路設計者と密に話をし、どうしたら実現できるか決めましょう。例えば基板の層を増やすことで実現できるのか、それとも基板を2階建てにしたら回路が実現できるのか・・・特に最初は回路設計者と話をしましょう。自分が知らないようなテクニックがいっぱい出てくると思います。構造的にどこまで小さくできるかというところも最近の設計で求められるポイントだと考えています。

 実現するにはチームプレーを大切にしましょう。

 

 基板の形状に続き、基板をどう固定するかというのが機械設計者の課題になるかと思います。基板によってはタクトスイッチや、可変抵抗などのUIとなる部品が実装されることが多くあります。また、金属筐体の場合は接触してショートすると問題なので、ショートしないように考える必要があります。

 結局普通の部品設計と同様に、基板も固定位置のばらつきを抑えるようにしなければならないのです。(もちろん十分なマージンが取られている構造であれば、割と適当でなんとかなってしまいます。)

 

例えば、タクトスイッチが実装された基板を想像してみてください。ネジ通し穴としてM3のネジを通すため、φ3.6の穴を基板に設けるとします。

これをすべての固定用の穴で行うとどうなるでしょうか?

・筐体の穴の位置とボタンの位置がずれている

・筐体とボタンが接触している

このような問題が発生する恐れがあります。

特にタクトスイッチの場合、剥き出しで使うことは少ないです。ボタン部品とタクトスイッチの位置関係が狂ってしまい、製品ごとに押した感触が変わるということもあります。

基板も結構悩ましいですね。

 

図面などの話をしましたが、少しプロセスは前に戻って次回は部品と部品の合わせ方について話をします。今回の基板の話も関係します!

図面の書き方 - 幾何公差

今まで寸法という距離の精度の指示の方法を書いてきましたが、

L字型の部品の曲げ角度の精度を高めたいとか、コの字型の部品の平行度の精度を高めたい、平面の滑らかさを出したいといった時はどうするのでしょうか?

例えば垂直であれば角度の寸法を描いて公差を指示するでもいいかもしれません。

 

こういう時は幾何公差という描き方で指示をします。

幾何公差の記号一覧

幾何公差を書くことで、外観の形状のばらつきを抑えたりすることができます。

この幾何公差も積極的に活用してもらえればと思います。

図面の書き方 - 公差

寸法を書くと、次に公差を書く必要が出てきます。

 

公差というのは指示親寸法のバラつきの許容範囲を示すものになります。

この公差・・・具体的にどんな数値にしたらいいのか悩みますよね。

理想を言えば全部±0 でもそれを作ることは不可能です。

余談ですが・・

最近ではAとBの部品の寸法を3次元測定器で全て計測し、AとBの関係をぴったりにするような生産技術も存在しています。でもそれはとてもコストがかかります。

 

話を戻して、実際に公差を入れる時の数値ですが、

JIS規格に従いましょう。逆にJIS規格で示された公差よりも小さな公差を指示しても実現ができないということです。

 

例えば樹脂であれば、

公差データ | 樹脂加工ドットコム-プラスチック精密切削加工専門メーカーの三森製作所

板金部品であれば

www.nagai-giken.com

このようなページを参考にしましょう。

 

どのページを見ても、公差にランクがあると思います。

このランクですが、例えば精級を一箇所で選ぶと、他の寸法公差も精級にしなければならないというわけではありません。

自分が考える重要度に応じてこの部分は精級で、この部分は中級で溶いう形で分けて書いてください。

公差指示だけではなく、とても重要な寸法を長丸で囲んで指示すことで、より重要な寸法ですと指示をするというテクニックもあります。

これらを組み合わせて指示することで、効率よく高い品質を生み出すための図面を描くことができます。

 

前述の内容を守って図面を書いていると、寸法が多くて大変な時があります。そういう時は、書く手間を省く方法もあります。公差が書いてないところには一般公差を使用するという指示の仕方です。

重要なところだけ公差を書き、それ以外は一般公差に従うという形で、図面の端に一般公差表を書いて指示することができます。

 

このような手法で図面を書いてみましょう!

 

 

図面の書き方 - 寸法

図面の描き方について書きますが

図面は実際に手を動かして描いてみないとわからないことが多いです。

そのため、細かい内容を書くことは難しいです。

お伝えするのは描く上でのポイントになります。

 

それを踏まえた上で見ていただければと思います。

今回は寸法の描き始めについて説明します。

 

前回の記事で図面は品質を確保するための仕様書というお話をしました。

3Dモデルができたことで、図面のあり方が変わり、会社では"簡易図面"という呼び方をしていました。

簡易図面といえど、品質を確保するための仕様書です。

3Dモデルで十分品質が確保出来る部分の寸法は描かないだけで、立派な図面です。

だから、複雑な形状であれば完成させるのに1日以上かかったりします。

 

では、実際に書くときの話をします。

図面に寸法を書くというのはとても簡単そうで、奥が深いです。

寸法は始点(基準)から終点(目的の位置)までの距離をかけばいいだけなのですが・・・

ちょっと考えてみましょう。

・その寸法をなぜ描こうと思ったのですか??

・その始点(基準)てどうやって決めますか??

この2点の決め方を説明します。

○その寸法を描く意味

 3Dモデルから、2Dの線図を描いた後、どこに寸法をかけばいいのか。

簡易図面は品質を確保するための仕様書なので、無駄な寸法は省くことができます。

そのため、効率よく描くためになぜその寸法を書く必要があるか考える必要が出てきます。その寸法を書く意味を見つけるのはとても簡単で、

寸法を書くところ=精度が欲しい部分です

ただそれだけです。

その精度が欲しい部分は何なのかというと、

他の部品と接しているところ

が多いと思います。A部品とB部品が接触する、ネジで固定する、はめ合わせる、すれすれで干渉しないようにしたい・・・AとBの関係性を保持するためには、各々のばらつきを減らしたいですよね。そういう部分に寸法を描きます。

○始点の決め方

 描くための理由がわかれば、この寸法が必要だとわかります。

次にその寸法の意味をより深いものにするため、基準を決める必要があります。

この基準がなければ、せっかく描こうと決めたのに、何のための寸法なのかわからなくなってしまう恐れがあります。

 

では、どうやって基準を決めるのか・・・やることはとても簡単です。

基準とする面、角、穴を決めることです。

この平面は板金部品であれば、金型と並行な面(一度も曲げられない面)

樹脂部品であれば抜き勾配のついていない平な面(パーティングラインでもいいですし、キャビティの頂点の面でもいいかもしれません)を選びます。

穴であればわざと基準穴を2つ作ることで、1つの軸を作ることで基準にすることもあります。

その部品が製造過程で加工されない面、金型が作りやすい面を選ぶというのがポイントです。

穴に関してもこの平面に加工して作ることになります。

 

描く意味、そして基準が決まれば、やっと寸法を図面に示すことができます。

形状が複雑になってくると、寸法を書くスペースがなくなってきたりします。そこでよく使う手法としては累進寸法です。基準からどれだけの長さがあるのかがわかりやすく示されるので、オススメです。

 また基準からどれだけの公差が欲しいと示しやすいため、誤って累積公差を描いてしまって、自分が想定していた公差よりも大きな公差を許容してしまう指示をするといったミスを防げることもポイントです。

 

今回の話を踏まえて実際に図面を書くだけで金型を作る方が読み易い図面になります。

 

意外と寸法1つとっても色々なことを考える必要がありますね。